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Japanische Klassiker mit Furigana

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いそべのわかば

磯部の若葉

岡本 綺堂

Lesen Sie 磯部の若葉 (いそべのわかば) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.709 Zeichen · 8 Bildschirme

Aozora Bunko

その傍にはまた高い桜の木が聳えていて、枝はあたかも墓の上を掩うように大きく差出ている。周囲には沢山の古い墓がある。杉の立木は昼を暗くするほどに繁っている。『仮名手本忠臣蔵』の作者竹田出雲に斧九太夫という名を与えられて以来、殆ど人非人のモデルであるように洽く世間に伝えられている大野九郎兵衛という一個の元禄武士は、ここを永久の住家と定めているのである。

一昨年初めて参詣した時には、墓の所在が知れないので寺僧に頼んで案内してもらった。彼は品の好い若僧で、色々詳しく話してくれた。その話に拠ると、その当時この磯部には浅野家所領の飛び地が約三百石ほどあった。その縁故に因って大野は浅野家滅亡の後ここに来て身を落付けたらしい。そうして、大野ともいわず、九郎兵衛とも名乗らず、単に遊謙と称する一個の僧となって、小さい草堂を作って朝夕に経を読み、傍らには村の子供たちを集めて読み書きを指南していた。彼が直筆の手本というものは今も村に残っている。磯部に於ける彼は決して不人望ではなかった。弟子たちにも親切に教えた、色々の慈善をも施した。碓氷川の堤防も自費で修理した。墓碑に寛延の年号が刻んであるのを見るとよほど長命であったらしい。