Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぴこんちゅうかん
神秘昆虫館
国枝 史郎
Lesen Sie 神秘昆虫館 (しんぴこんちゅうかん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.803 Zeichen · 213 Bildschirme
角張った顎も意志的である。顔色は赧く小皺などはない。身長高く肉附きよく、腰もピーンと延びている。永らく欧羅巴に住んでいたが、最近帰朝した日本人――と云ったような俤がある。非常な苦痛を持っていながら、強い意志力で抑え付け、わざと愉快そうに振る舞っている。――と云ったような態度がある。
「ここか、桔梗、吉次もいたか。俺はな、やっぱり諦めようと思う」岩の一所へ腰をかけ、こんな調子に話し出した。「なくなったものなら仕方がないよ。随分手分けして探したが、見付からないのだから止むを得ない。それにさ」と云うとやや皮肉に、「雄蝶一匹を手に入れたところで、全く役に立たないばかりか、それを手に入れた人間は、かえって禍いを蒙るのだからなあ。それで恐らく吃驚りして、逃がしてしまうに相違ないよ。逃がせば蝶は帰って来よう。ああそうだよ、この山へな。で、そいつを待つことにしよう。よしんば永久に帰らないにしても、後に残っている雌蝶をさえ、握っていれば大丈夫だよ。神秘の秘密は解けるものではない。とはいえもちろん心掛けて、絶えず捜索はするんだなあ。私の云いたいのはこうなのさ。なくなった雄蝶ばかりに心を取られ、雌蝶の方を疎かにしては、かえってよくないとこういうのさ。