Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

(わたしはさきごろ)

(私はさきごろ)

高村 光太郎

Lesen Sie (私はさきごろ) ((わたしはさきごろ)) von 高村 光太郎 (たかむらこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.517 Zeichen · 3 Bildschirme

Aozora Bunko

私はさきごろミケランジェロの事を調べたり、書いたりして数旬を過ごしたが、まったくその中に没頭していたため、この岩手の山の中にいながらまるで日本に居るような気がせず、朝夕を夢うつつの境に送り、何だか眼の前の見なれた風景さえ不思議な倒錯を起して、小屋つづきの疎林はパリのフォンテンブロオの森かと思われ、坂の上の雪と風とに押しひしがれてそいだような形になっている松の木はあのローマの傘松を聯想させ、見渡すかぎりの清水野のゆるい起伏はローマ郊外のいわゆるカムパーニヤ ロマーノの展望にさえ見えるのであった。炉辺で眼をつぶると、何だかアルノオ河の河岸の石だたみや、ポンテ ヴェッキオの橋が近所にあるように思われたり、遠くの空にローマのサン ピエトロの円屋根が聳えていたりする。今は一九五〇年の冬のはじめで、ここは日本東北地方の山の中だという現実がうそのように思えたりした。

そういう心的状態の中で私はまっすぐにミケランジェロを凝視した。この稀有な人間の正体がどんなものであるかを見きわめようとした。私の脳裏のミケランジェロはその行蔵の表裏矛盾にみちしかも底の底ではただ一本道を驀進するタンクのような人間であった。