Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme
「それは」
「ほかでもない。かの、みかどの乳父吉田ノ大納言定房卿が、宮中のおん企てを密告したものであると申す儀は、まことであろうか、虚伝であろうか」
「密牒のお筆は、まぎれなき定房卿の直筆なりと、聞いております」
「やはりそうか……」
これだけが、彼の瞋恚に炎となっていたものらしい。
廂ごしの夜空をにらんで、いかにも無念そうな面を澄ました。けれど何もことばには現わさなかった。そしてやがて。
「世のこと、すべてだが、わけても人と人との離合ほど、計り知られぬものはない。――みかどを初め、われらまでが、またなきお方と頼んでいた者には、かくの如く裏切られ、かえって鎌倉の御内たるおん身から、かかる情けにあずかろうとは」
「それも宿世の御縁でしょう。思うに、あなたは公卿にお生れあったのが御不運なので、われら同様、武門の子であったなら、怖らくは一方の驍将として、晴れやかな御一生を遂げえたやも知れません」
「いやいや、たとえ非業に死のうと、俊基が朝臣に生れたことは、いささかの悔いでもない。あす刑場にて首斬られるまでも、一念、鎌倉幕府の亡びを見んと、なおも念じつづけているであろうよ」