Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記 (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 126.598 Zeichen · 254 Bildschirme
「いや、そう聞けば、安堵いたした。……雨露次とやら、あらためて、迎えをよこすぞ。日野朝臣から懇ろなお旨もあること。そち夫婦の身は、散所屋敷に引き取って、不自由なきよう、取りたてて得させる」
豊麻呂は、そういって、まもなく帰った。
「では。……あれは毒薬だったのか」
――豊麻呂が帰ったあと。
「ああ、知らなんだ。神ならぬ身、おめぐみ下すった日野朝臣も知らぬ過ちだったとやら。それが、毒薬とは」
夫婦は、今さらのように、慄然とし、また、ふしぎな命拾いに、驚いた。
もし、あのさい。
雨露次の留守で、卯木が捕吏に拉して行かれなかったら? ……。そして十数日も監禁されたこの災難もなかったとしたら。
疑いもなく、卯木はあれを、貴薬と信じて、飲んでいたにちがいない。
「卯木。これやただ事ではないぞえ。何度も、二人は生き疲れて、あの夜も、いッそ夫婦心中をして果てようか……などと、そなたもわしも、つい死の安けさに引かれていたが」
「死ぬな……と、何かが、私たち夫婦に、こんな驚きを見せるのでございましょうか」
「そうとしか思われぬ。お互いの亡き親たちが、世に意気地のないわしたちを草葉の蔭からお案じて、つよく生きろと、叱っていらっしゃるような気もする」