Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
一波をおさめては、またすぐ一波の喊声を繰出し、激闘は夜半におよんだ。――すでに守備の城兵側には、たれの手にも弓はなかった。射る矢が尽きていたのである。よじ登ッてくる命知らずを迎えて、いたる所で乱刃の斬りむすびや取ッ組みあいの肉闘が行われていた。
「正季、さいごだ。かねていいおいたとおり、二ノ櫓、三ノ櫓、ほかの陣屋陣屋へも、今はいちどに火をかけろ」
正成は、眼の下の味方へ、こう命じた。
そして自身の立っていた本丸櫓へも火をつけさせて、炎のうちから、
「多聞兵衛正成がさいごを見よ」
と、なんどか叫んだ。
けれど彼の姿をよく見たものはなかった。
そこの黒煙には面を向けようもなかったし、砦は全面な紅蓮の池と燃え、また、たちまち山そのものが、焼けるにまかせる山火事となっていた。
その下をくぐって。
城兵は桐山、吉年村、森屋などの方へ、算をみだして逃げて行った。また、水ノ手の高塚山を掻き分けて、無二無三、奥へさして落ちて行く一群も先にあった。
「おやかた」
「兄上」
喘ぎ喘ぎ、追っついて行った正季らの若武者ばらは、先に見えた正成の影へ、恨めしげにまず言った。
「お見捨ては残念です。