Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
後醍醐もまた、沸るような眼で彼女の凝視に凝視を返していらっしゃる。
あたかも、それは廉子だけがひとり帝とここにいて、ほかの二人の妃など、そばにいないかのようであった。
あきらかに廉子は意識している。その意識を帝も映しとっている。ゆるされるなら、彼女はこう叫びたいにちがいない。
――ご無念でしょう。
――このご無念も。いつかは、真っ暗な日月と共に、青天に回して仰ぐ秋がありましょう。それまでのご辛抱です。それまでは廉子もどんな辱にも耐えて死にますまい。お上もゆめご短気などおこしくださいますな。
そしてもしまた、ほんとにここにほかの妃もいず人目も見なければ、廉子はいきなり帝の膝へむしゃぶりついて、そのお肌へじかに、物狂わしいまで瀝ぎもしたろう。
だが、帝にも廉子にも、惧れられたのは、そばにいる小宰相ノ局だった。
その小宰相は、こんど新帝の朝に右大臣と返り咲いた持明院方の久我具親(堀川ノ大納言)の妻の姪だ。もとから帝も小宰相にはお気をゆるしていなかったが、幕府は抜け目がない。新朝廷がたの息がかかっているその小宰相をさりげなく三女人のうちに加えていたのだ。