Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
待てよ。
高氏は自分を踏みとめた。おれとしたことが、こんな煩いなどにとらわれていていいものか。一女子の涙などに――。
時局は重大だ。
今日も午後には、六波羅集会があり、その寄合触れもとどいている。在京の諸大将はあらかた寄ろう。高氏もそろそろ支度して出向かねばならないと考える。そつぜんと、彼はその頭を切りかえていた。――すると、われにもあらぬ非情な笑いが口へ出てきた。
「ははは。ハハハハ」
もうその姿を、路傍の花か何ぞと軽く見ている風で、
「いやこんな世の中、さだめしと、察しはつくがの、なにせいここは陣中だ、女をお匿いするわけにはゆかぬ」
自分を突ッ放すように言ったのである。そしてあとから、慰めをつけ加えた。
「だがの小右京どの。いかようにもお力にはなって進ぜる。ゆめ、死のうなどと馬鹿なお考えは持たぬがいい。そのうち、所領の丹波篠村へでもお隠ししよう。今日のところは、ひとまず、身寄りの家とかへお帰りなされ」
彼女の返辞は待たなかった。彼はすぐ立って、
「十郎っ、十郎」
と、遠くへ呼びたて、その佐野十郎にわけを話して、小右京の身に万一のないよう、途中を兵に守らせて、宿まで送ってやれ、といいつけた。