Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
輿の垂れをも打った。輿は地へ投げ出される。
ちょうど、佐野十郎らの供人も、背後から駈けつけていたことだった。道誉の家来たちは、われがちに逃げ出した。相手が悪い。逃げるしかなかったろう。
すぐ輿の戸を開けさせてみると、声もしなかったはず、小右京の身は猿ぐつわを噛まされて、後ろ手にくくられていた。
「むごい仕方を」
高氏は面をそむけた。義憤めいた感情のむかつきを、今やどうしようもなかったらしい。
「十郎っ。そちはここから引っ返せ。そして、小右京どのの身を、どこへでも、匿もうて上げるがいい」
「では、羅刹谷の内へ、留めおかれますか」
「むむ。ここの一難は去ったとしても、さきゆき、またも虎口に見舞われたら何もなるまい。一存でよいようにしておけ。申しつけたぞ」
高氏は、もう人委せにしたかったのだ。そういい捨てて、すぐ六波羅へいそいで行った。
この日の五条総門は、もと薔薇園の辺から主典ノ辻、車大路まで、供待ちの馬や車でいっぱいだった。
「はて、遅刻かな?」
外の雑鬧にひきかえ、庁の閣内は、しいんとしていた。高い橋廊下を大股に行く高氏の影はややあわてていた。
すでに広間の議場では、在京の諸大将の列座が粛と水を打ったような行儀をつつしみあっていた。