Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
「お、権ノ五郎か」
父の松田重明は、待ちかねていたふうである。いやここの城中全体が「権ノ殿が帰ったぞ」というそのことを焦点に、かたずを呑んだ空気だった。
加古川で見て来たあらましを、権ノ五郎は父に報告していた。重明はいちいち頷く。彼は、ややあから顔で、かっぷくのいい六十がらみの武将なのだ。
「そうか。帝のご不予も、たいしたことではないのだな」
「は。お旅疲れは、もちろんでございましょうが」
「道誉は」
「いつに変らず、世辞のよい御仁。帰路には会いたい、父上へよろしくなどと」
「いやその世辞が油断ならぬ。よも、こちらの腹を見やぶられはしまいな。都ではいくたびも会っておるが、群をぬいて如才のない、そして炯眼な佐々木道誉のことだ」
「だいじょうぶ、察してはおりません。第一、いかに道誉が炯眼であろうと、大覚ノ宮が、わが家へ御避難あって、松田一族の外護をうけているなどとは、ゆめにも思っておりますまい」
「そうだ、宮にも、お待ちかねのはず。帝のご消息、そのほか、そちからじきじき申しあげるがいい」
父子は連れだって、さらに館の奥の、孤立した一殿へ入って行った。持仏堂だろうか、一僧が出て来て手をつかえ、