Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
城といっても、やや堅固なただの古館でしかない。
しかし、曲輪門の内の人間は、あるじから末端の者まで、みな戦争支度の弓や白刃の中に在るのであった。――しかも篝火などは用いず、部屋部屋の灯もうす暗い短檠や燭台ぐらいなもので、人々の足音や気配まで、ふだんよりひっそり静まり返っているだけ、なにかいい知れない鬼気のただよいすらあった。
「……いや権殿。あなたの方は、それで上々といえよう。ところが、こちらの目企みは、そうかんたんにはまいらなくなったよ。月に雲とは、よくいったものだ」
さび声の、しかも沈痛な口吻だった。人をも遠ざけた一室のうちである。
かねてからの申し合せにより、彼が首尾をつたえて、大覚ノ宮や父重明とともに「すぐ起つべし」と、うながしに来た人――これがその当面の人なのであろう。児島備後ノ三郎高徳だった。
口重げで、もの言いぶりも吶々と、風貌からして、朴とつな武人である。年齢は四十がらみ。
どこにも才気ばしッた風のないだけ、内はかえって剛毅なのかも知れない。まるっこい栗色の顔だ、栗に長いモミ上げや大きな両眼を取ッつけたような容貌である。……分厚い肩を屈め気味に、しきりに考えてばかりいる。