Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
「なるほど、飽浦の佐々木党、加治源太左衛門らが知ったとあれば、油断はならぬが、それにはそれの、後ろ備えを当てておけば、仔細はあるまい」
と、耳もかさず、
「ともあれここはすぐ立たねば、父重明や大覚ノ宮にも、はや大安寺の城を出ておられるし、時もおくれる」
と、せきたてた。
けれど高徳には、彼が気を揉むほどな反応は一こうに見えなかった。
「ま……もすこし待たれい。万一、その留守城を襲われて、ここも、松田殿のお城も、飽浦佐々木党の手に落ちたら、せっかく奪い奉った帝をどこへお守りできようか。まもなく、もっと詳しい情報が入って来るはず。それを確かめてからでも遅くはおざるまい」
権ノ五郎は焦だった。
「備後どの。その細作(しのび)はいつ帰るのか。夜が明けるのではあるまいな」
「まさか」
高徳は鈍く笑う。笑ってあとは答えない。
この分別そうな団栗顔がこの者の特徴とは五郎もとうから知っている。分別貧乏というやつだ。分別しいしい、そのくせ、積極的な四隣から、伝来の領土もいつか少しずつ掠め奪られ、いまでは先祖の遺産も、熊山の山間地方とここの今木に、半郡にも足りぬものを、やっと保持しているだけのこの土着武士。