Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
宴は、更けてゆき、この夜も、後醍醐はおそばの廉子が案じるほど、いくたびか大杯をかたむけられた。そして、やがては御自身、琵琶を抱いて、弾じられた。琵琶の音は、玄々淙々、人々の酒腸をいちばい多感にした。
その琵琶は、帝が六波羅におわしたころ、中宮(皇后の禧子)からお獄舎のうちに献じた物である。遠く、中宮へお別れを告げるお心もあったであろうか。
ほどなく、行宮の宴は罷み、武者たちもみな思い思い、野陣へひきとって、寝しずまった。
そのあとは、暗い浪音だけだったが、いつとはなく行宮の古御堂を抜け出て、裏の林のうちへ、すうっと消えこんで行った女性がある。
典侍のひとりの小宰相であった。
「……塩冶か」
すると、木蔭にうずくまって、さっきから彼女を待っていたらしい者が、
「はっ。高貞でございます」
と、同じような小声で答えた。当夜の宴も果てて人みな立ちかけた混雑間際に、高貞は、その小宰相からふと意味ありげな結び文を受けとっていたのである。子ノ刻、ひそかに裏の松林で待てとしてあったのだ。
かねて。
小宰相ノ局は、ほかの二人の妃とちがって、後醍醐とは反対派の現帝に仕える堀川大納言の姪であり、内々、鎌倉の息がかかっているものとは、高貞も鎌倉下知状で知っていた。