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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme

Aozora Bunko

ああ、魚に河は見えない。

無知でそして憐れなもの、それは魚とおなじ人間という名の生き物か。

と、憐れに観たことにちがいなかった。

×       ×

「さて。やっとこれで」

と、佐々木道誉は、水を得て泳ぎ出したように呟いた。「……これで自分の身には返ったものの、しかし、どうやら心はゆるせぬぞ」

たった今、彼は、六波羅ノ庁から馬上で出て来た。身装も長い旅のままである。

すでに、彼が大任をおえて、帰京したのは、かれこれ十日も前だった。しかるに、私邸に戻る儀はゆるされず、そのまま禁足の厄に遭い、今日まで庁にとどめられていたのだった。

そして、鎌倉の指令が、やっと今日、探題の許へとどいたものと見える。

「一応、ご帰館はさしつかえない。しかし、再度のお沙汰までは、自邸において、謹慎あるべしとの上意でおざる」

という命なのだ。

何か、旅先の処置が、鎌倉の嫌疑となったにちがいない。道誉には、もちろん心あたりもある。

だから唯々として命に服し、にんまりとその申し渡しもうけて、

「かしこまり奉る」

と、いま庁を馬上で出て来たのである。いささかの不平も昂奮もしていない。