Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
そんなものを鼻にかけて、誰が、かほどに手間をかけて女を口説くか。そなたの養父、花夜叉の一座にしろ、以後も変りなく召抱えているのをみても思うがいい。道誉はただ男としてだ」
「あっ。たれかッ」
彼女は、妻戸へ肩をぶつけた。
しかし、道誉は見ていた。あわてて捉まえようとはしないのである。
そこが開かないのを承知だからでもあるが、なぶるほど、狂うほど、また悲しむほど、女の美が増すのを知って待つかのような、彼のいわゆる男根性なのだった。
そこの物音は、すぐ止んだ。と共に、灯も消えている。
おそらく、侍部屋の一つにまだ起きていた早川主膳は、池向うの離亭に聞えた藤夜叉の叫びも耳にしたことにちがいない。
「……?」
が、もちろん、彼は近寄らなかった。
ただ、離亭の辺の、黒い山吹の茂みと、さざ波もない池水を見まもりながら、ほっと、自分の気の弱い吐息に、気がついていたに過ぎまい。
何がそこで起ったかは、主膳でさえも、怪しげな想像図に眩めくほど、分っている。
「……ひどいことをなさるもの」と、主君の獣欲ぶりに舌を巻く。
いや主君の好色は驚くに足りないが、その豹変ぶりには、ただあきれるばかりなのだ。