Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme

Aozora Bunko

「はははは。奴、柿ムキをやっておるのか」

「呼んでまいりましょう」

「いや、放っておけ。下部の者や、長屋の子らと、一つになっているなどはいいことだ。……なあ久子」

正成も、縁へ来て、妻のそばに腰かけた。そして、指さしながら言った。

「あれみい。そなたが、この楠木家へ輿入れの日に、実家から移し植えた柿苗も、はやあのような木になって、大きな実をつけ出している」

「秋の来るたび、わたくしも、あの若木の伸びが、目に入ってなりませぬ」

「早いなあ」

「もう、多聞丸をかしらに、二郎(正時)、三郎丸(正儀)。三人の母となりました。柿も実を持つはずでございまする」

「むむ、そこでさて、夫婦の仲の柿の子は、まだ渋柿やら甘柿やらも分らんなあ。たのむぞ、親根はそなただ」

南河内には、古い習慣がある。――嫁に行く折、柿の苗を持ってゆき、嫁いだ家に植えるのだった。――やがて子を産みつくし、働きつくし、かつての花嫁も婆となって死ぬと、共に老いたる柿の木も伐って、薪とする。そして、その薪で火葬に付されて終るのが、女の一生と約されていた。

だから、秋々の柿の育ちと、実の赤さは、女の眼には、女の短い一生に物を思わせる――。