Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
――藤房も坊で休息中に装いをあらためたか、中納言の衣冠をしていた。チラと正成を見、会釈だけしておくへ通ってゆく。――ほぼ正成と同年配の三十七、八とながめられた。
「おもてなしにも粗相あるな」
家臣へいって、正成は遠くの部屋で身清めやら衣服のかえにかかった。さすがに久子は極度な緊張におそわれている。良人の着がえをみるやら、厨へ行って、もてなしのさしずをするやら、ただならない。
やがて、土豪造りの楠木家の古い館のうちも、まったく人なきもののように、ひそまり返った。――すべての者が、遠くへ退げられ、勅使、万里小路藤房のいるところの燭だけが、
「あるじや何時?」
と、待ち澄まされていたからだった。
正成は、しずかに廊をつたわって、勅使の前へ出た。
“兵衛”なる官職名だけはあるが、それは名だけのものにすぎない。いわば一個の山家侍だ。――著名なる“天皇側近の三房”の一人宣房の嫡、中納言藤房のまえでは、勅ならずとも、はるか下賤な地下人だった。
「多聞兵衛正成は、わたくしでございまする」
「あなたか。儂は」
と、藤房も名のった。
正成は言った。
「かかる山家へ、みかどの御使とは恐懼にたえません。