Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
寂として、これをいぶかるような気配もない。そのまにミシリミシリ堂の廊を一巡してゆくと、神器のある賢所でもあろうか、み簾を垂れた内陣の一隅に夜すがら点っている一穂の灯が見えた。
ずかずかと二人はそこへ寄って行く。
そして、隠し持っていた油びたしの鞠を解いてその布の一端に火をつけたと見えた途端だった。
「あっ、何をする?」
宿直寝していた公卿の一人がふと眼をさまし、
「曲者っ」
と、小見山のその手もとへ向って跳びかかった。
でん! と公卿の体は内陣の床にたたき捨てられ、同時に彼の手から躍った火の鞠が一条の炎の線を曳いたままはるか須弥壇の礼座の辺までビユッと火叫びしながら飛んで行った。
ほかにも、具足のまま転び寝していた宿直武者があったらしい。大床の隅からどっと金属的な鳴り響きを起すと共に、
「敵だっ」
「裏切り者ぞ」
と、狂気じみた声で呼ばわり合った。
それへ向って、陶山義高もまた、火の鞠を抛り投げた。鞠は油の細布を解き放題にころがッて行き、その火焔を踏みつぶそうとすればするほど縦横な火の渦やら火の線を描くばかりなのだった。
「出合え」
「火を防げ」
「お座所を守れ」