Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
主力の、しかも総大将が討たれた。――とわかったので、朝霧の引くように、全軍の関東勢が乱離となって逃げ薄れたのはぜひもない。しかし副将足利高氏の上流軍は、まだ健在のはずである。そのため、上流へ落ちて行く兵も少なからずあった。――時に、高氏はもう桂川を西へ、渡渉にかかり出していた。
五千の人馬は、橋みたいに、桂川を二つに見せた。
そこから下流は水の色も変り、対岸は白いしぶきでけむり立った。――直義、師直たちも、水を切って、
「殿、殿」と、さきに駈け上ったひとを追っかけていた。
高氏が振返った。その姿も、雫だった。何か、二人から不安そうな注意をうけていたが、
「すてておけ」
と、聞き流し、
「大事ない、大事ない」
とばかり、彼は、もっと先の諸将のあいだへ、駒をすすみ入れて行った。
「よいかしら?」
直義は、不安らしく、まだ後方をふりむいていた。
大事ない
よくいう兄の口ぐせである。だが、うしろからは、下流で敗れた本軍の名越勢の残兵が、かなりな数、この軍を味方と信じて、たよるように、くっついて来るのであった。
「とんと、お胸はわからぬ」と、師直もつぶやいた。「が、あの大腹中は、あとになってみると、いつも無策ではおざらなんだ。