Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
さりとて、ただ引っ返すのも業腹至極。あれゆく高氏の姿に、狙い矢一つ射て立帰ろう」
「よせよせ。しょせん、敵わん。こっちは小勢だ、命あっての物だねよ。引っ返して、ことのよしを六波羅へ告げ知らせるこそ、おれどもの急務であろう。おういっ、もどれ、もどれっ」
この二将は、わざとおくれて、手の者三、四百をまとめ、大江山の麓からどっと元の道へ駈け去ったのだ。そのため、これを動機に、全軍も大いに揺れ、諸所で逃げ出す者も少なくなかった。が、高氏は「大事ない、大事ない」としているように、振向きもせず、駒は、老ノ坂へかかっていた。
老ノ坂は、昔の大江の関の址である。酒呑童子の首塚がある。またよくよくこの地は天下反覆の人物に縁がある。
後の天正年間に、桔梗の旗を、西にあらず、本能寺へ行けと、京のあかつきへ指さした光秀も、ここ老ノ坂を踏み、いま、道順は逆だが、高氏が越えるところも、老ノ坂だ。
そこから一里で、丹波篠村へ着くのである。すなわち足利家の飛び領で、大江山そのものも、篠村領に入っている。
篠村の領家には、長々、今日の時節を待っていた引田妙源やそのほかがいた。また一色右馬介について、これまで、さまざま働いてきた者どももいた。