Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「元からの家の紋か」
と、たずねたところ、時重の答えには、
「さようです。家の先祖、武蔵の久下二郎重光が、頼朝公のお旗上げのさい、土肥の杉山へ一番にはせ参じたところから、御感によって、一と賜わった重代の紋にございまする」
とあったので、高氏は、
「それは、めでたい。当家にとっても吉瑞だ」
と言って、ひどくこれをよろこんだという。これをみても、彼の自負が、ひそかに自己を頼朝の再来に擬していた理想のほどもうかがわれようか。
けれど、続々集まってきた武士どもには、綸旨のしめす王政復古も、高氏のいだく未来図も、問うところではなかったのだ。彼らはただ天下大乱のなかに泳ぎ迷っていた濁流の群魚にすぎない。また多くは世に不遇だった不平武士でもある。そしてそれらの下積み武士の不平をたれよりも身に知っていたのは高氏だった。
五月。雨期に入る。
が、ことしは梅雨も少ない。
ただ、ここの兵力だけは、梅雨の大河のように刻々とその勢いを増していた。
十人の筆役(書記)を使って、毎日、新参の武士どもの氏素姓を名簿に書きあげていた兵事奉行の吉良貞義は、
「いや、驚き入りまする」
と、高氏の床几所へ、その簿を持って報告にくるたびに、こういうのが常だった。