Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
序戦、半日の矢戦では、新田軍はほとんど所持の矢束を費いつくし、ぜひなく小手指ヶ原の北方へ、一時その陣を遠く退いた。
なぜ、義貞は退却したのか。
思うに、持ち矢は尽き、代え矢も不足してきたのであろう。矢束の量は、半日の矢戦でも、たいへんな数を消耗する。
これを積み歩く輸送力など容易でない。矢三百本を一ト搦げとした矢束一カは水を充たした桶ほどな重量である。四千騎で射れば、一瞬ごとに、四千本は消えてゆく。――それだけの物を、牛馬車の輸送隊で、えんえんと持ち歩くなどは、こんどのような急行軍のばあい、不可能だし、義貞の本意でもない。
疾風迅雷、鎌倉の不意を突く。
また。日ごろ鍛錬の鉄騎と白刃にものをいわせ、あくまで野戦の騎兵主力で突入する。
その腹だったにちがいない。
「船田の入道」
「はっ」
「千寿王どのの手勢も無事に退いたろうな」
「されば、ずんと後陣でしたから、はやあれなる低い丘に、紫のお旗を見せておられまする」
「オ、あれがそうか。紀ノ五左衛門を、ここへと呼べ」
その伝令をうけると、五左衛門はすぐ馬でとんで来た。
「五左衛門、すさまじい矢戦だったが、そちの主君の稚子大将は、輿の内で、お泣きになった容子でもないか」