Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
あははは」
前後の将も、みな笑った。
府中の六所神社で義貞は願文をあげた。また千寿王へは、全軍が多摩川を渡りきるまでここにいるようにといって、その紫の旗を玉垣の外に立てさせた。何かと悠々たる義貞の指令ぶりだった。すでにきのうの一戦で敵は完膚なきまで叩いてある。川向うに拠った残軍が、その陣容をたとえどう立て直していようとも、ほぼその抵抗ぶりなど知れたものとしていたのであったらしい。
ところが。
やがて江田行義、篠塚伊賀守、綿打ノ入道義昭らの三隊が、川へ先陣を切ってゆくと、がぜん、対岸から猛烈な弓鳴りがおこった。およそ相手が渡渉して来そうな浅瀬は敵もよく見ていたのである。川のなかばを越えるやいな、白い死線のしぶきが描かれ、みるまに、騎馬歩兵、次々に泡沫となって消えうせる。
上流にも備えがあった。
また下流でもおなじ犠牲がかず知れず出ていた。
ようやく、義貞も、
「これは」
と、この渡河戦にやや用意を欠いていたことに悔いの汗をにじませていた。しかしもう消極な作戦には返りえない。彼の命令で、水馬に自信のある者は、敵影のない深瀬の淵を通って馬を泳がせ泳がせ渡っている。