Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
嘲笑は、日頃もよくする人だった。彼の娯楽の一つなのである。
そこへ、お妻ノ局と小女房が、銚子をもって来た。酒は、なみなみと銀に注がせ、三献ほど、息もつかずに傾けて、
「持ってゆけ」
と、すぐ追いやった。
ぼうと、瞼に生気の色がさしてくる。高時の中の、もひとつの高時が、やっと眠りをさましたふうだった。
「負け戦! それもはや近ごろは耳新しいことでもない。……わけて世は裏切り流行だ。この鎌倉も落日とみて、裏切らぬやつは、近頃、ばかみたいなものだからの。はははは、そうじゃあるまいか、金沢の爺」
「滅多な仰せ事を。かりそめにも、ご執権おんみずから。……彼方の侍どもにも聞えまする」
「聞えてもいい。わしは世間を眺めて思うのだ。裏切ったやつがまたいつか人を裏切り自分を裏切る日が来なければ倖せだと。……恐ろしさも、こうなると、いっそ、面白の世やと、謡拍子にして謡いとうなる」
「太守。ここは御陣中です。浮沈のさかいです。なにとぞ、ご酔言もちとおつつしみを」
「だまれ。いまほどな酒で酔いはいたさぬ。ほんの鬱気を散じるため、薬湯代りに、折々、用いているまでだわ。この高時に酒進らせぬと、わが軍の士気は揚がらぬぞ、はははは」