Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
思うに新田方は策として、一挙決戦を逸っていたし、一方、赤橋守時の兵も、大将守時が、ひそかに抱いていた悲壮な決意をそのまま映して、全軍決死の相をおびていたものにちがいない。
そのころの武蔵路、大船から戸塚街道へかけて。また藤沢寄りの丘や野づらでも――両軍の衝突は、地形に制せられて、幾十ヵ所にも分裂していた。
卯ノ刻――午前六時ごろから暮れがたまで、各所での白兵戦六十余たび、なお、ひからびた両軍の武者吠えはやまず、敵か味方かの、けじめもつかなくなっていた。
すでに白い夕星を見、風にはなんともいえぬ血臭くて重たい湿度があった。とくに赤橋勢の損害はひどく、るいるいと屍を野にみだしていたが、そんな中をいま、
「殿ッ」
足もとの見さかいもなく、一人の小冠者が狂奔して行き、
「殿っ。殿はどこです?」
と駈け過ぎる騎馬をみるたび、手をあげていたが、耳をかす一騎もない。すべて逃げ退いてゆくらしかった。
そのうちに、小冠者も、空馬を拾った。そしておなじ方向へ駈けた。すると山崎の上に密集している軍があった。彼は馬を捨て、またおなじ叫びをくりかえしながら崖をのぼッた。
やっと尋ねるお人に会えたのである。