Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「そうか。……高時が行くところたちまちそこは兵火となる。……お会いは出来ぬが安心いたした。長い間ご不孝をおかけしましたと、おつたえ申しあげてくれい」
「尼公さまからも、今生の後先などは、つかのまのこと。どうぞおとりみだしなく、北条九代の終りを、いさぎよく遊ばすようにと……」
「いさぎよく?」
「満つれば花にも落花みじんの日が否みようなくまいりまする」
「いや、人間の子には業がある。花のようにはまいらん。……だが言ってくれ。高時は高時の死に方をしよう。死にたくないと泣き吠えて死ぬかもしれん」
「ホ、ホ、ホ、ホ。それもおよろしいかもしれませぬ」
彼女は笑った。
白い顔の一微笑に、まわりの甲冑は、その血まなこをしゅんと醒ました。高時もまた、彼女の唇もとにつりこまれてか、胸を反らして哄笑した。すべての眼には、二人の姿が、一対の狂人みたいに怪しく見えた。
「尼前」
「はい」
「大儀だった。はや帰れ。ここもあぶない」
「いいえ」と、彼女は顔を振った。「ご最期をお見とどけするまで、ここにおかせていただきまする」
「なに」
高時は、耳を疑って。
「わしの最期を見とどけるまで、そなた、ここの陣中におかせて欲しいと申すのか」