Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
日ごろ町で見つけているただの男女ばかりである。いささか彼は安心すると、商売柄、口もかろく、そろそろ暗闇の中の無口な魚たちへ小声ではなしかけていた。
「もし。おまえさまはどう見ても、どこぞの旦那衆のようなお方だが、どうして牢などへ、ぶち込まれなすったのかね」
「わたくしですか」
と、その五十がらみの男はいう。
「悪いことをした覚えは何もありませんが、ただ先日のこと、記録所にお勤めのさるお公卿さまから、唐織十反、そのほか品々のご註文があったので、よろこんでお納めすると、その代金じゃといって、楮幣とやらいうひょんな札の束を手代にわたしてよこしたではございませんか。驚きましたね。かような紙では、代金とも物代ともいただきかねますと、自分でお返しに伺ったところが、怪しからぬ奴、ひかえておれとのことで控えていると、まもなく検非違使からお役人が来ましてね」
「へえ? じゃあおまえさまも、何か、楮幣を悪くいったんですかえ」
「それあ、言いますよ。商人ですもの。あんな紙きれを、銭だといって、糸屋や織娘へ払っても、先で承知するもんじゃありません。……わたしばかりじゃない、そこにいる法師も工匠も、また向うにいる田楽役者の一と組も。