Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
と、洒ア洒アと言った。
「ずるいやつだ」
と、お笑いになりながら、康清へ大杯をやれ、と仰っしゃる。満座も笑った。笑いがやむと康清はいま聞いた読人不知の歌をいい声で朗詠しだした。
ほととぎす
八幡 山崎
啼きかはす
声のなか行く
淀の川ふね
やんや、やんやの喝采であった。わけて康清は有名な美声家なので、その音声は、はるか山門の方にまでよく聞え、そのへんで出御待ちしていた武者輩までが、しいんと、一とき耳を洗われていた。
「……淀の川ふね」
尊氏も、そこの床几で、ふと口で反覆してみた。
淀は、尊氏にとっていろんな思い出のことが多い。歌の意味も、何か、胸に沁み入ったふうである。
――と。急にそれで思い出したらしく、床几を離れて、山門の袖のほうを見た。大勢の足利一党だけが西溜りにひかえている。その中から一つの顔が尊氏の目にこたえて立った。
「…………」
尊氏が黙って人なき楓林の中へ歩いてゆくと、その者もすぐあとを追って来た。一色右馬介なのだった。
「介。どうした?」
「昨夜の刺客のことでございますな」
「そうだ。そちに預けておいた楠木家の廻し者、白状したか。それとも、あのままか」