Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme

Aozora Bunko

「もう聞いたのか」

「師直は執事。胸にたたみおかぬわけにまいりませぬ。仔細は右馬介より聞きとりました。のみならず、昨夜、禁裡からお退がりのせつは、楠木の一勢が、殿のお身を六波羅まで送りとどけてまいりました由」

「うむ」

「それも言語道断な沙汰です。過ぐる六月七日、ここを夜討ちせんと、宮将軍が密々な令を廻したとき、楠木の手勢は、奈良から宇治口をとって、あきらかに六波羅の背後へうごきを見せたものではございませぬか」

「そうだ。宮の令とあれば、正成はいつでもそれに反くことはないだろう」

「しかもまた、男山で殿を襲った曲者も、楠木の弟の部下。それと分りながら殿も殿です。都の中とはいえ、夜ふけの道を、その楠木の手の者に送られてお帰りあるなどとは」

「ま、よかろう。行幸も事なくすみ、わしも無事にゆうべは眠った。が、じつはの師直。ほんとに眠れたのは明け方だった」

「なかなかお寝れなかったのでございまするか」

「だめだのう、まだおれは。あれを思い、これを思い。……ちょうどそちが煩っていた歯痛みとおなじような疼きに終夜悩まされての」

なるほど、尊氏のどこかには、いうがごとき我慢にじっと歯の根をかんでいる風がある。