Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
淵辺は、一書には“淵野辺”とも書かれ、生国は奥羽本荘とだけで、その他は、身分もはっきりしていない。
しかし直義がえらんでこの大秘事をいいつけた男である。身分は低くても猛勇で正直者と見られていたのはたしかであろう。――やがて、彼の影は、薬師ヶ谷東光寺の裏へ、獣の這うように這い寄っていた。時はもう丑の刻ごろ。谷の内は灯一つ見えなかった。
現今、そこは郷社「鎌倉の宮」となっているが、古くは東光寺、薬師堂、理智光院などの廂や塔影が接しあっていたものだった。
しかし大塔ノ宮が幽屏された当時は、それよりつい一年前にあの鎌倉幕府滅亡の大戦災をみていたことであるから、ここも例外なく半壊同様な寂れであったにはちがいない。それとさきにも書いたが、宮がこの一年を土牢に押しこめられていたとする古典「太平記」の土牢説はまちがいで、まったくは陽の目も見ぬ一堂の居室ではあるが、侍女南の御方のかしずきも受けておられたほどなのである。
ことむずかしくいえば、土牢は塗籠で、すなわち“塗り籠め”――壁ばかりな部屋ということの訛伝であろうか。
それにせよ、通い戸のほかは、庭口も廊の渡りも、牢御所と名に呼ぶごとく矢来やぶつけ板で囲まれていたこととは想像される。