Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
「そうだ、この難行も、ともあれ伊吹へ着くまでのことだ」
と、考えたに相違ない。
つかのま、ご一睡もあって、みかどは左の肱の矢傷を白布で巻き、ここからは怪しげなあじろ輿の内になって行かれた。
おなじく後伏見も花園上皇も、馬には馴れぬお身を、ここまでは、夢中であったが、
「もう鞍ズレに耐えぬ」
とのお訴えで、いずれもここで輿となった。
輿をになうのも輿丁ではない。どれもさんざんに戦い疲れた兵どもである。日ごろは小指の血にすら色青ざめる女院にしてさえ、いつか兵の血まみれ姿にもさまでなお感じもなくなっていた。なお幾人かはつき従っていた公卿どもの素足にも血泥が黒く乾いていた。
それら供奉の人々も、今は、
按察使ノ大納言資名
綾の小路中将重資
宰相の有光
勧修寺中納言経顕など、ほんの七、八人に過ぎず、かえりみ合って、
「みなどうしたか?」
と、憮然であった。
たれよりも力としていた南の探題時益の落命を途中にみてから、越後守仲時のすがたにも一そう孤愁の影と悲壮が濃かった。しかも従う兵は、半分以下にまで減っている。
が、その夜は、六角領の観音寺城泊り。眠るだけはよくやすまれた。