Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
宮の御生涯そのものがすでにこの世の土の牢だった。
いや、現世土牢にひとしい宿命の人は、宮おひとりのみかはである。ただならぬ世のことだった。帝王、貴紳、武門、どこに生れても輪廻まぬがれ難い土牢の魔の口がいつも身辺にあったといえよう。宮を殺害した武士淵辺なども根は愚直なほど朴とつな人間だったに相違ない。何が彼をそうさせたかの方がよほど恐ろしい世態である。淵辺はこれによって後に出世などはしていなかった。
ぼんやり、淵辺伊賀守は、西へ向って歩いていた。
あの夜のままな姿だった。人相はひどく変ってしまっている。
「おれは?」
ぶつぶつ、独り何かつぶやき、行くべき道をさがしているような、しかし、世間の目がみないまや自分へそそがれているような、おちつきのない彼だった。おれは天皇の子を殺した悪党だ。と世間の声を自分でぶつぶつ言っているのらしい。
酒の気があった。途々、居酒屋でもみつけると、一杯かぶっていたもののようである。
事を仕果した上からは、直義との約束もあること。頭をまろめて世外へ隠れ、出世の迎えを待ってさえいれば、よかろうものを、淵辺の愚直なまでの本心の呵責が彼をそうさせなかった。