Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
後年、附近の八葉山蓮華寺のうちに、
蓮華寺過去帳
なるものが伝えられた。
それの伝写に依ると。
元弘三年五月・執筆・糟谷十郎
と、供養者の氏名まで明記されて、それには仲時以下の死者四百三十二人の俗名が洩れなく書き遺されてきたのであった。なお執筆者の糟谷十郎とは、おそらく当年の糟谷三郎宗秋の縁故の人か。
くだって、江戸時代の「木曾名所図会」などみると、街道に沿うた番場ノ宿の町なかに“仲時の塚”というのが載っており、そばの丘には“六はら山”と註がある。そして附近は、時宗でら蓮華寺の門前町と移り変って、そのむざんな遺跡も、街道の一点景にすぎない風物と化し去っている。
矢うなりや、石つぶてもやみ、やがて賊徒も鳴りをしずめた。そして、賊たちはこわごわと寄って来た。
いかに彼らでも目をおおったことだろう。血のうみである。四百余人の声なき屍だけである。
「……?」
そのうちに賊の部将らしい男どもが、目と目を見交わしていたとおもうと、勇を鼓すがごとく、一向堂の縁へとびあがった。そして堂の扉を蹴った。つづいて六、七名が躍りこんだ。
「……あ」
と、かすかなふるえ声を、彼らは薄暗い中に聞いた。