Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(五) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 252.330 Zeichen · 505 Bildschirme
すると直義は、憤然とそれをこばんだ。――そんなことではこの占領下の、治安の維持はたもてぬと、つよく言い張るのであった。
高氏は弱った。彼に潜む政治性が弱りぬいた。
その政治的な考慮から、大塔ノ宮の腹心殿ノ法印へは、先に「何とかいたしましょう」と、口約してあるのである。
しかし直義が、頑として、
「いやです、いかに仰せでも、治安の任にある者として、さような計らいは出来かねまする」
と、受けつけないのにはどうにもならない。主張は、正しいにちがいないのだ。
「先夜とらえた群盗の首魁が、大塔ご幕下の者とわかれば、なおさら以て、厳罰に付すべきで、それをゆるしなどしては、治安もくそもありません。ご粛正も空念仏に帰しまする」
直義は、むきになって、言いまくしたものだった。
「なんのための御教書であったでしょう。かつは宮の御家来ならどんな非理でも通ると心得おるその思い上がりが小面憎い」
「まあ直義、そう一途に申すなよ。世相にはうらおもてもある。むずかしい……まことにむずかしいこのさいなのだ」
「いや何とはなく、大塔ノ宮なる御存在が、兄者のお胸をむずかしくしているのでございましょうが」