Japanische Klassiker mit Furigana
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ちちぶのおもいで
秩父のおもいで
木暮 理太郎
Lesen Sie 秩父のおもいで (ちちぶのおもいで) von 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.234 Zeichen · 7 Bildschirme
秩父の数多い山の中で、高さに於ても姿に於ても、金峰山は一際すぐれて群を抜いている。御室から登る五十町の峻坂は、岩といい樹といい、如何にも山らしい感じを与えるので、決して飽きることのない路である。絶頂の五丈石は、よしや下から眺めて期待した程のものでないにしても、三角点を中心として縦横に重なり合っている大きな岩塊は、高山の生れたままの荒っぽい一面を偲ばせるものがあると共に、一方には又あの緑の毛氈を敷いたような岩高蘭と苔桃の軟い茵に、慈母の優しいふところを思わせる親しさがある。未だ若い山登りの初心者として、はじめて金峰山の頂上に立った私は、抑え難い衝動から、いきなり五丈石に攀じ登って、誇らかに昂ぶる心を満足させたのであった。そして岩を下りると、小さい灌木の青い茵にふっくりと身を埋めて、ごろりと寝ころんだまま長い間空を見詰めていた。其時私はふと今まで気が付かなかった不思議な問題にぶつかったのである。立山の絶頂では、室堂をすぐ脚の下に眺めながら、なぜあのように淋しい頼りない思いに堪え兼ねて惶しくかけ下りたのか。乗鞍岳の絶頂では、一夜を立ち明していながら、朝になってなぜ物に怯えたようにして、一歩は一歩と人里に近づくのを喜んだのか。