Japanische Klassiker mit Furigana
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まどにさすかげ
窓にさす影
豊島 与志雄
Lesen Sie 窓にさす影 (まどにさすかげ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.068 Zeichen · 26 Bildschirme
「でもねえ、人にはその人の寿命というものがあるからね。」
祖母はもう覚悟していたのであろう。七十五歳の高齢で、そして老衰病だった。それから十日とたたないうちに、安らかに息を引き取ったのである。
祖母の衰弱が甚しくなると、私は気が気でなかった。学校も休んで看病の手伝いをした。兄は毎日会社に出かけたし、父もたいてい出かけた。母は見舞客の応対や家事のことに忙しく、女中も多忙だった。看護婦だけでは手が廻りかね、私は病室につきっきりのことが多かった。
そして私は、のっぺらぽうの方へあまり気を取られずにすんだ。その上、極力それを忘れようと勉めた。けれど、変なことが起った。
自分の室で、髪を直したり、着物を着換えたり、一休みしたりするような時、ふと窓の方を顧みて、はっとすることがあった。その窓の磨硝子に、何か物影がさしてるのである。何物とも知れぬこともあり、自分の姿だと分ることもあり、のっぺらぽうが自分の姿に重ってると思われることもあった。たいてい、うっかりしてる油断の隙間にそれが現われて、すぐに消えた。私は自宅では和服のことが多かったし、忙しくなると着物を衣紋竹に掛けておくこともよくあったが、その自分の着物までが気味わるく思われて、出来るだけたたんでおくことにした。