Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくはくき
竹柏記
山本 周五郎
Lesen Sie 竹柏記 (ちくはくき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.798 Zeichen · 91 Bildschirme
「堪忍して頂いたと、思ってもよろしゅうございましょうか」
孝之助は包むような眼をして頷いた。
「有難うございます」杉乃はもういちど頭を垂れた、「どうぞお寝間へいらしって下さいまし、おねだりがございますから」
孝之助は立って寝間へいった。
そこはいつもとは支度が変っていた。重ね夜具を屏風でとりまわし、絹張りの行燈の脇に、祝いの膳が置いてある。それは覚えのあるけしきだった。華やかな色の重ね夜具、清らかに嬌めいた絹行燈の光り、そして祝いの銚子の載っている膳。それは婚礼の夜の、床盃の支度であった。
――そうか、あの白無垢……あの髪、あの化粧はそういうつもりだったのか。
孝之助は微笑した。微笑しながら、眼がぼうと濡れ、行燈の光りが霞んだ。
「――おまえ覚えていたのか、杉乃」
彼はそっと呟いた。
「――あのとき床盃をしなかったことを、……ずいぶんながいおあずけだったね」
杉乃が入って来た。孝之助は静かに、膳の前に坐った。