Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わらうあくま

笑う悪魔

野村 胡堂

Lesen Sie 笑う悪魔 (わらうあくま) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.687 Zeichen · 55 Bildschirme

Aozora Bunko

手洗場の前の廊下から、硝子窓に額を当てて外を見ると、正月の宵空は真っ暗で、星一つ見れない雪模様です。

「千種君」

肩を叩く者があります。

振り返ると熊谷合名の社員で、美しい美保子の兄の潮田春樹、千種とは昔の同窓で、仕事は違って日頃交渉はありませんが、何がなし名前を聞いただけでも、心持の温まる間柄でした。

二人は同じ三十五、どちらも独り者で、どちらも文科出、千種十次郎が多血質で、颯爽型なのに対して、潮田春樹は妹によく似た美男で、色の白い神経質の男でした。

千種十次郎が学校から新聞社へ飛込んで、十年間に相当の地位を築き上げたのに対して、潮田春樹は二つ三つ会社を渉り歩いて、最後に同郷関係の熊谷合名に入り、いまだに下級社員に甘んじて居るのは気の毒なことです。

「潮田君、――君の来ていることは知って居たが、席が遠いので話も出来なかったよ。先刻一寸席を外したようだが――」

「気分が悪くなって、ヴェランダに出て居たが、――ところで、新聞記者の第六感でどうだね」

「?」

「この目出度い限りの熊谷家に、妙な無気味なものがあると思わないか。――ヴェランダから見ていると、此屋敷を何んか目に見えない妖しいものが、ヒタヒタと取巻いて居るような気がするんだ」