Japanische Klassiker mit Furigana
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そろばんがこいをかたるはなし
算盤が恋を語る話
江戸川 乱歩
Lesen Sie 算盤が恋を語る話 (そろばんがこいをかたるはなし) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.096 Zeichen · 16 Bildschirme
第一手紙などと違って証拠の残る憂いがないのです。実に万全の策といわねばなりません。幸にしてS子がこれを解読して受入れて呉れればよし、万一そうでなかったとしても、彼女には、言葉や手紙で訴えたのと違って、あらわに拒絶することも出来なければ、それを人に吹聴する訳にも行かないのです。さてこの方法はどうやら成功したらしく思われます。
「あのS子のそぶりでは、先ず十中八九は失望を見ないで済むだろう」これならいよいよ大丈夫だと思ったTは、今度は少し金額をかえて、
「六十二万五千五百八十一円七十一銭」
とおきました。それをまた数日の間続けたのです。これも前と同じ方法であてはめて見ればすぐわかるのですが、「ヒノヤマ」となります。樋の山というのは、会社から余り遠くない小山の上にある、その町の小さな遊園地でした。Tはこうしてあい引の場所まで通信し始めたのです。
そのある日のことでした。もう十分暗黙の了解が成立っていると確信していたにも拘わらず、Tはまだ仕事以外の言葉を話しかける勇気がなく、相変らず帳簿のことなぞを話題にしてS子と話していました。すると、一寸会話の途切れたあとで、S子はTの顔をジロジロ見ながら、その可愛い口許に一寸笑を浮べてこんなことをいうのです。