Japanische Klassiker mit Furigana
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ふんにょうたん
糞尿譚
火野 葦平
Lesen Sie 糞尿譚 (ふんにょうたん) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.974 Zeichen · 99 Bildschirme
振り返ると、鳥打帽を被った洋服姿の男がくるくるとステッキを廻しながら立っていた。誰か一寸思いあたらなかったが、やっと、民政党の新聞記者であることを思い出し、表に出ると、その男は、一寸顔を貸して貰いたいが、と云って歩き出したので、彦太郎もついて行くと、唐人川の岸辺の柳の木の下まで来て立ちどまり、こちらを向いた。狡獪な眼附だと思い、なにか用ですか、と彦太郎は訊いた。早速だが、と新聞記者は鬚のない顎を捻りながら、先達、君の提出した歎願書は誰が書いたのか聞かして欲しいのだ、と云った。私とこの主任が書きました、と躊躇せずに答えたが、云ってよかったかなとすぐ後で思った。主任? と腑に落ちかねた表情で、主任というのは誰のことか、と訊き返した。阿部さんのことですたい、と答えると、阿部? 阿部? と繰り返し、思い出せぬ風であったが、ははあ、西部運送の阿部丑之助だな、そうだろう、とやっと思いあたった様子で、そうです、と彦太郎が答えると、あの阿部が君の衛生舎の主任か、と怪訝そうな顔をし、待てよ、とまた考え、あれはたしか赤瀬春吉の娘婿だった筈だ、それでわかった、なるほど、なるほど、となにやらしきりにひとり頷いて、小森君、だいたい君は考え違いをして居りはせんか、と見据えるように云った。