Japanische Klassiker mit Furigana
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「もん」
「紋」
黒島 伝治
Lesen Sie 「紋」 (「もん」) von 黒島 伝治 (くろしまでんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.739 Zeichen · 10 Bildschirme
」
「そうじゃろうか。……それでも、あいつを棄てるんは可愛そうじゃし……」
おりくの家には風呂がなかった。地主の家や、近所で入れて貰っていた。で、向いの本土へ出稼ぎに行っている息子が時々帰ると、その土産物を御礼のつもりで心して持って行っていた。ところが、猫が悪るさをしだしてからは、地主の家からも、近所からも、風呂に入りに来いと云ってきなくなった。
「そこの人が悪いと、猫まで悪るなるもんじゃ。」風呂入りに集った近隣の老人達はおりくの家のことを悪く云いあった。
「あしこには、ろくに飯を食わさんのじゃろう。」
「あしこの茂公は、ほんまに油断がならなんだせにんの。」
盗癖のために村にいられなくなって、どこかへ出奔して、十数年来頼りがない茂吉という、じいさんの弟があった。監獄へこそ行かなかったが、警察へはたびたび呼びつけられていた。近所の人々は、猫のことから、こんな古い疵(きず)まで洗いたてて喋りあった。
「もうあんな奴は放ってしまえ。」やがてじいさんは猫のことをこう云い出した。
「捨てる云うたって、家に生れて育った猫じゃのに可愛そうじゃの」
「うらあもう大分風呂イ入らんせに垢まぶれじゃ」