Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.628 Zeichen · 371 Bildschirme
実は幸子は、疲労の恢復を待つ一方、好い折を窺っていたのであったが、そう云う風にして日が立つうちに、奇妙なことには東京から持ち越しの疑念が次第にうすらいで行きつつあった。あの朝浜屋の一室で手紙を開けた時の驚き、その翌日も引き続いて犇と胸を締めつけていた憂慮、寝台へもぐり込んでからも夢魔のように夜じゅう自分を苦しめた問題、―――あの時はあんなに急迫した、一日も捨て置けない事件であると感じられたのに、不思議にも我が家へ戻って朗かな朝を迎えた瞬間から、だんだん緊張が弛み始めて、そう慌てないでもよいように思われ出して来た。いったい幸子は、もし問題が雪子の素行に関することであったなら、誰が何と云って来ても最初から取り上げる筈はなく、根もない中傷であるとして斥けてしまうに極まっているが、妙子は前に一度事件を起したことがあり、自分や雪子とはちょっと心臓の搏ち方の違ったところがある妹なので、まあ、露骨に云えば、全幅的には信用していない点があった。さればこそあの手紙に狼狽させられた訳であるが、帰宅してから妙子の態度に何の変化も認められず、晴れやかな顔つきをしているのを見ると、この妹にそんな後暗いことがありそうもないと云う気分の方が強くなって、あの時あんなに慌てたのが可笑しくさえ思えて来るのであった。