Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.628 Zeichen · 371 Bildschirme
三月に這入ってから間もない時分、或る夜眠りに就いた貞之助は、ふと、妻の涙が自分の頬を伝わって流れるのを感じて眼を覚ますと、暗がりの中で妻の微かに嗚咽する声を聞いたことがあった。
「どないしたん、………」
貞之助がそう云うと、
「今夜やわ、………あんた、………今夜がちょうど一周忌やわ。………」
と云いながら、幸子は一層はっきりとり上げた。
「もうあのことは忘れなさい。………いつ迄云うてみたかて仕方がない。………」
貞之助は、妻の眼からとめどもなく溢れ出る涙を唇に受けて呑み込みながら、寝る前迄朗かであった妻が、夜中に突然そんなことを云い出したのに驚かされたが、成る程そう云われて見れば、去年雪子が陣場夫婦の紹介で野村と云う人と見合いをしたのがたしか今月のことであるから、今日あたりがあの流産から満一年になるのかも知れなかった。が、自分は全く気に懸けてもいないのに、妻が未だに心中深く悲しみを蔵しているのは無理もないとして、こう云う風にいつもそれが発作的に襲来するのは不思議であった。去年の花見に嵐山へ行った時にも、秋に大阪歌舞伎座へ鏡獅子を見に行った時にも、彼は渡月橋の上だの劇場の廊下だので、こんな工合に、妻が不意に涙を落すのを見、又その後でケロリと直ってしまうのを見たのであったが、その時も矢張そうで、明くる朝になると、幸子は