Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.628 Zeichen · 371 Bildschirme
ごうごうと云う水の音がいよいよ激しく、車内にいても耳を聾するようになった。さっきのお婆さんが今も熱心に念仏を称えているのに交って、不意に朝鮮人の子供たちの泣き声が聞えた。
「あ、水が線路へ上ったぞ」
誰かがそう云うと、皆立ち上って北側の窓の方へ行った。水はまだこの下り線のところまでは来ていないけれども、土手の縁をひたひたと浸して、隣の上りの線路まで寄せて来かかっているのであった。
「車掌さん、此処は大丈夫でしょうか」
と、阪神間の住人らしい三十恰好の奥さんが云った。
「さあ、………もっと安全な場所へ逃げられたらお逃げになった方がいいでしょうけれども、………」
貞之助は渦巻の中をリヤカーが一台廻転しながら流れて行くのを、ぼんやり眺めていた。彼は家を出る時、自分は冒険的なことはしない、危いと見れば途中から引っ返すと云って来たのに、いつの間にかこう云う状態の中へずるずると這入り込んでしまった形であったが、でもまさか「死」と云うことは考えられなかった。女や子供ではないのだし、いざとなったらどうにかなると云う高を括った気持が何処かにあった。それよりも彼は、妙子の行っている洋裁学院の建物が、大部分平屋であったことをその時ふっと思い出して、ひどく不安にさせられていた。