Japanische Klassiker mit Furigana
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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 細雪 (ささめゆき) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 194.628 Zeichen · 371 Bildschirme
う。妙子は水面に首だけ出している女史を見ながら、死の運命が寸前に迫った人間の顔はああ云うものなんだなと思ったが、自分も今あれと同じ顔をしていることがよく分っていた。そして又、人間は、もうどうしても助からない、もう死ぬのだと云う時になると、案外落ち着いて、恐くも何ともなくなるものであることも分った。………
妙子がそう云う状態にいた間は、非常に長い時間、―――三時間も四時間ものような気がしたけれども、実際は一時間にも足りなかったであろう。彼女は、自分が取り縋っている窓のガラス戸の上方が、さっきも云うように一二寸程開いていて、そこから外の濁流が浸入して来るので、片手でカーテンを掴みながら、片手で一生懸命にそのガラス戸を締めようとしていると、ちょうどその時に、―――いや、実はその少し前から、自分のいる部屋の頭の上、―――屋根をみしりみしり人が歩くような足音がしていたが、その時ひらりと屋根の方から藤棚の上へ飛び移った人影があった。おや、と思うと、人影は藤棚の一番東側、つまり妙子が覗いている窓に一番近い方の端へやって来て、棚の縁に掴まりながら濁流の中へ降りるのであった。