Japanische Klassiker mit Furigana
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びしょうねん
美少年
岡本 かの子
Lesen Sie 美少年 (びしょうねん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.417 Zeichen · 27 Bildschirme
「鼠っぽのにいさん。わたしもう帰るわよ。だってもうお座敷の時間だわ。叱られちまうわ」
わたしは恐る恐るそのお雛妓を見た。額の広い顎の長い女で、髪は大きな桃割れに結ってるが額口はなんだか毛が薄くなってるように見えた。女の生活にはもう一人前の経験と態度を持ち、少女のままで大人の納りがついてしまったという感じをませた眼鼻立ちに現していた。
彼女は時春の方を偶然見当てたというふうに見やると、少し気まり悪いという声の落し方で
「今晩は」
とだけいったが、すぐ眼を転じて、わたしを頭の尖から爪尖まで邪慳な一瞥で見て取るや、「さよなら」といって、わたしたちの傍は憚るように駆け足ですり抜けた。すぐ姿勢を整え、しゃらこんしゃらこんとお雛妓一流の木履の鈴の踏み鳴し方に人も無げな空気の煽りを私達に残して群集の中に見えなくなった。
呼び返せるつもりで、しきりに「雛っぺえ」を連呼していた鼠っぽのおじさんも、今は力なく少年を顧り
「惚れるほど、わざと白っぱくれということもあるからね――だが、時、おめえも悪いぜ」
といった。
少年はとみると、お雛妓の声を聞付けたときから衣紋をつくろい、わたしを小盾に、なにかの技術を一工夫という様子がありありと見えたが、施す暇もなく呆気なく行かれてしまったのに、張合抜けがしてしまったらしい。