Japanische Klassiker mit Furigana
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おに
聴雨・蛍 織田作之助短篇集
織田 作之助
Lesen Sie 聴雨・蛍 織田作之助短篇集 (おに) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.483 Zeichen · 41 Bildschirme
「さア、この線にはありませんね」
「そうですか」
女はまた改札口を出て行って、きょろきょろ暗がりの中を見廻していたがすぐ戻って来て、
「たしかここが荒神口だときいて来たんですけど……」
「こんなに遅く、どこかをたずねられるんですか」
「いいえ、荒神口で待っているように電報が来たんですけど……」
女は半泣きの顔で、ふところから電報を出して見せた。
「コウジ ング チヘスグ コイ。――なるほど。差出人は判ってるんですか」
新吉が言うと、女は恥かしそうに、
「主人です」と言った。
「じゃ、荒神口に御親戚かお知り合いがあるわけですね」
「ところが、全然心当りがないんです。荒神口なんて一度も聴いたことがないんです」
「しかし、おかしいですね。荒神口に心当りがあれば、たぶんそこで待っておられるわけでしょうが、そうでないとすれば、駅で待っておられるんでしょうね。しかしスグコイといったって、この頃の電報は当てにならないし、待ち合わす時間が書いてないし、電報を受け取られたあなたが、すぐ駈けつけて行かれるにしても、荒神口というところへ着かれるのが何時になるか、全然見当がつかないでしょう。