Japanische Klassiker mit Furigana
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しょっこうとびしょう
職工と微笑
松永 延造
Lesen Sie 職工と微笑 (しょっこうとびしょう) von 松永 延造 (まつながえんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.696 Zeichen · 144 Bildschirme
実を云うと、私は未だ新しい悲愁に眼を蔽われていて、考える力、理性を適当に働かす力を恢復してはいないのだが、それでも、夢の中であった事を思い出すように仄かな幽かな――云わばまるで暗示のような解答を捕える事が出来る。
彼の女に取って、あの断崖は懐かしい思い出の場所であり、恐ろしい罪を想起させる刑場でもあったらしい。そして、私は確かに二度迄も彼の女の口から洩れかかる懺悔の言葉によって、それを直覚していたのであった。それ丈は今斯うしていて、思い出し得る間違いのない記憶である。いや何たる忌わしい記憶であろう。
それから何うしたか? 語る可きもっと重要な事はないのか? あり過ぎる。それで困っているのである。私はもっと前の、もっと古い記憶から辿り直さねばいけないのだ。いや、説明の出来ない沢山の事が、語るのがつらい色々の事が、何うしてそんなに私の心の中に蠢動するのであろう。
事の初めは何であったか? 私の母とミサ子との気持ちが合わなかったのを先ず思い出せ。それである。原因と名附けられるのは確かにそれであろうか? いや、之は大きい原因ではない。けれど斯んな工合であった――即ち、ミサ子と私の母とは大きい喧嘩をしたのだ。