Japanische Klassiker mit Furigana
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はないくとせ
花幾年
折口 信夫
Lesen Sie 花幾年 (はないくとせ) von 折口 信夫 (おりくちしのぶ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.442 Zeichen · 5 Bildschirme
東京の春があらかた過ぎてから、ことしの花はどうだったかと思い出した年があった。自分だけかと思って、恥しいことだとひとりで赭くなって、誰にも言わなかった。五月近くなってから、「ことしの花は、どうだったけなあ」一人言い二人言い、言い出す人が、ちょいちょいあって、不覚人は、私ひとりでもなかったことを知った。併し痛切に感じたのは、やはり私位のものだろう。
その前年も、その亦前年の十八年の春も、花見る為に、わざわざ吉野山へ行ったほどであった。しみじみ吉野の花が見ておきたい。そんな気がこの五、六年来、春になると頻りにした。それで無理をしいしい、今言ったおととしの前年も、それから尚二年先も、何だか妙に憑かれたように大和路へ出かけたものだ。十九年の春などは、もう花見と言う世の中でもなかった。桜のいっぱい咲いて居る山の夕光の中に一人立って居ると、何だか自分があわれっぽくてならなかった。吉野の町の入り口の黒門まで来ると、土産物屋の亭主や、宿屋の若い者――そうでなくても、我々みたような遊山客相手に暮している人たちに違いない。それが道のまん中に立ちはだかって、一々通行人を咎めているのである。