Japanische Klassiker mit Furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Lesen Sie 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.046 Zeichen · 104 Bildschirme
しかし慶三は最早や最初ほどには驚きもせずまたどういう訳かそれ程に女の不貞を憤る気も起らなかった。最初はあの男の為めに全然お千代を奪い取られるような気がしたのであったが、その後早くも一箇月ばかり過ぎている間度々怪しい男の出入りした様子があるにも係わらず、お千代の自分に対する勤め振りには少しも変りがない。却て以前よりも一層慶三の気に入るような勤め振り、それは絵本で見る昔の御殿女中がお宿下りの折の役者狂とて、まさかこれほどではあるまいと思われるような有様を見せるので、慶三はどうかすると自分の方が却て金を貰って勤めをしているような心地さえする事があった。それ故その瞬間には必ず充分の満足と安心を覚えるのであるが、しかし一度お千代を離れて妾宅を出るが否や、入替りにあの洋服をきた葉山が自分と同様な或はそれ以上の快楽を横取りしにやって来るのだと思うと、どうにもこうにも我慢が出来なくなる。いかに我慢が出来ないからとて、こればかりは実に為すべき手段がない。慶三は云わば途法に暮れ果てた月日を送る中、いつか世間はすっかり秋になってしまった。朝夕、日毎にまさる肌寒さ、慶三はお千代の身体に触れて見る感覚に、いよいよ云い知れぬ捨てがたさを覚える。